現在は、携帯電話がなければ不便と思うくらい生活に不可欠な物となっているが、10年前にはもちろんここまで浸透していなかった。振り返ると、待ち合わせひとつとっても、携帯電話がない状態で良く出会うことができたなあと不思議に思うぐらいである。
 携帯電話の登場で状況が一変したのは工事現場においても同様である。携帯電話が使用できるようになり、業務が大きく変った。事務所でしかできなかった電話が現場でできるようになったのである。たとえば、資材の注文や連絡事項は、昼休みや現場終了後に事務所に帰ってからまとめて行っていたものだが、今は思い立ったとき、即座に現場から電話をしている。いってみれば、携帯が仕事環境を変えたのである。こうした変化は今後も続くことだろう。
 今はまだ事務所に帰らなければできない仕事でも、携帯電話を利用することで、現場でできるようになってくるのではないだろうか。
 たとえば、その一つとして、事務所にある様々な書類が、現場から携帯端末(携帯電話)を使用して見ることができるようになるのではないだろうか。最新機種では、ファイルの種類によるが、メールの添付やネットワーク経由でサーバ上のデータを携帯で閲覧出来るようになった。サーバ上に設計図面や特記仕様書を置いておけば、これらサーバ上のデータは現場から携帯電話で見ることが可能である。図面などでは、全体像を見るとなると携帯の小さな画面では厳しいが、現場で「あっ!」と思うのは、図面の一部である寸法や材料の仕様などを忘れた時である。普段は図面を持ち歩いているのに「今日に限って!」というとき、「細かい仕様まで頭に入っていない」「記憶が曖昧なので確認したい」といったとき、今までなら事務所に戻って、図面等を確認したり、携帯電話で問い合わせをしなくては解決しなかったのだが、こんなときでも現場から直接、携帯電話にて必要な箇所を確認することができる。効率があがるうえ、ミスを減らすことが出来るだろう。
 現在は、まだ通信速度と処理速度が遅いため、全面的に依存するのは非効率ではあるが、今後改善が進めば、手ぶらで現場に出向くことも可能になる。現場における無線LANの発展と電子的な野帳(PDAなど)との組合わせでも同様のことが可能になるだろう。